左右の脚の長さが違う?!“脚長差”について
この記事の監修者
株式会社AKAISHI 代表取締役 赤石恒一 / 保健学博士
靴医学の権威、新潟医療福祉大学大学院の阿部薫教授に師事。専門分野は保健学で、足の悩みの改善や、靴の機能向上のための研究をしている。
【所属学会】日本整形靴技術協会(副会長)、日本靴医学会
“脚長差”って?
誰でもある“脚長差”
整体などで「左右の脚の長さが違う」と言われたことありませんか?
“脚長差”とは、字の通り、脚の長さの差のこと。左右の脚(下肢)の長さが違う状態を意味します。約70~75%の人に脚長差がみられるという報告もあるほど、珍しいことではありません。脚の長さを測っても、まったく同じという人の方がまれなのです。
では、治療が必要な脚長差とは?
治療等が必要になるのは、不快感を伴う5mm以上の脚長差とされています。日常生活に支障がない程度であれば、神経質になることはありません。
また、靴の高さ調整を必要とする大きな脚長差については、すでに医師に相談していると思いますが、原因や対処法も複合的で複雑ですので、自分で判断せずに専門医を受診することをお勧めします。
では、主に中高年でみられる、脚長差の例をご紹介していきます。
脚長差の2つの定義
「解剖学的脚長差」と「機能的脚長差」
脚長差には、2つの定義があります。
- 「解剖学的脚長差」
- 一方の下肢の骨が他方より長い、構造的な違い。いわゆる「左右の下肢の長さが違う」状態のこと
- 「機能的脚長差」
- 脚周辺部などの機能不全により、一方の下肢が短くなること。復元することが可能なもの。
こちらは、構造上は骨の長さに差はないのに骨盤のゆがみや股関節の動く範囲の違いなどで歩行障害が起こり、結果的に脚の長さが違うと感じてしまう場合を言います。
この両方が起こっている場合もあります。
脚長差、その原因と症状
1 股関節の手術:人工関節手術 (股・膝) をおこなった場合
人工股関節を入れた方は、その際に左右の脚の長さに差が出ることがあります。どういった手術をおこなったのか、片足か両足かで状況は異なります。(解剖学的・機能的脚長差)
2 股関節の手術:自骨を温存して手術をおこなった場合
手術をした方の骨が短くなることがあります。(解剖学的脚長差)
3 骨盤のゆがみや筋肉の問題によるもの(機能的脚長差)
骨盤の筋肉の片方だけが緊張している、足を組んで座る、立っているときに左右どちらかに体重をかける癖がある等が原因になります。
4 足部の問題<踵の骨の異常など>(機能的脚長差OR解剖学的脚長差)
ハイアーチや過回内足(いわゆる偏平足程度)での影響は少ないと思いますが、踵の骨(踵骨や距骨)部分に異常がある場合は、脚長差を生じることがあります。
定義としては、インソールやサポーターで改善可能なものは、機能的脚長差と捉えた方がいいのかもしれません。
5 その他 関節リウマチ、骨変形、側弯症 などによるもの
マッサージや整体で「脚長差がありますね。」「骨盤も歪んでいますね。」と言われ、施術されてよくなることがありますが、これは機能的脚長差が改善されたことによる効果です。
機能的脚長差は、筋の緊張・関節が動く範囲が狭い・体幹の歪みなどと関係しており、これらをマッサージや整体などで整えることで脚長差も改善されていきます。しかし、骨の長さが伸びるわけではないので、解剖学的脚長差は改善されてはいません。インソールや履物で脚長差を補正させてあげる必要があります。
脚長差の検査方法
どの程度の脚長差があるのか?機能的なのか解剖学的なのか?
自分自身でチェックすることは難しく、専門的には義肢装具士や理学療法士にみてもらう必要がありますが、どのような確認方法があるのかご紹介しておきましょう。
病院ではレントゲン等から複合的に判断することもありますが、解剖学的脚長差を診る1つの方法として、アリス試験という検査法があります。
●アリス試験のチェック方法
<※1人ではチェックできないので、必ず協力者と2人で行ってください>
(1)検査対象者は、仰向けに寝ます。
(2)検査する人が真上から見て、上前腸骨稜(ベルトをするあたりの骨の出っ張り)が線Aのように左右まっすぐになるよう、位置を調整します。床にテープなどを貼り目安にすると判別しやすくなります。
(3)検査対象者は内くるぶしの位置を揃えるように、膝を曲げます。
(4)検査する人が真上から見て、膝の位置に違いがある場合は、大腿骨(太ももの骨)の長さが違うと判断できます。
(5)また、膝の高さに差がある場合は、脛骨(ふくらはぎの骨)の長さが違うと判断できます。
この他の検査方法として間接測定法があり、立った状態で、左右の骨盤の高低差がなくなるまで短い方の脚の下に一定の厚みの板を入れていき、脚長差を測ります。
ただし、この方法では骨盤の傾きが必ずしも脚長差が原因ではないことを考慮する必要があります。機能的脚長差も含めて総合的に判断することが必要ですから、大まかな目安くらいに考えてください。
自分でできる「解剖学的脚長差」の補正
構造的に脚の長さが違う<解剖学的脚長差>は、靴などによる補正(両脚の高さを整える)が可能です。
インソールを使用して補正
脚長差の補正は、単純にいえば、短い方の脚の長さを靴底(踵部)やインソールなどで高くすることで補正が可能です。
ただし、ご自身でできるのは、既成靴の場合(靴にもよりますが)インソールでできる5mm~8mmくらいの補正が限界だと思います。
※これ以上の脚長差の場合は、特別に靴や装具を作らなければいけないので医師や専門店で相談しましょう。
注意点
つま先まであるタイプのインソールでは、指先の上部が靴にあたり痛くなるなどの問題がおこりやすくなります。踵もしくは踵~土踏まずくらいまでのハーフインソールでの補高をおすすめします。
パンプス等では、靴の構造上インソールを使うことが難しく、2〜3mmの補高でも、踵脱げを起こしてしまいますので、靴底での補高が必要になります。
インソールを2枚も3枚も入れて補高しようと、本来のサイズより2サイズ位大きめのものを選ぶ方がいらっしゃいますが、大きいサイズの靴を履くことで補高しない方の靴がブカブカとなり、余計に股関節・膝関節や足に負担をかけてしまう場合があります。
インソールで補高する際は、なるべく、普段のサイズ(大きくても1サイズアップまで)で、試してみてください。
靴底での調整
靴底での補正は、靴底用の糊や靴底材など専門的な用具が必要になるため、ご自身で行うには少しハードルが高いと思われますが、市販のすべり止めパットやクッションパットを貼ることでかんたんな補高なら行えます。お悩みの方は試してみてください。
ご自身の判断だけで行うと、症状を悪化させてしまうこともあります。できたら、まず医師にどのくらいの補高が必要なのかを相談してみてからにするといいでしょう。
ちなみに、5mmくらいの脚長差は、医師によると誤差範囲ととらえるようです。
しかし、ランニングなどの脚に負担のかかりやすいスポーツをされている方、お仕事で長距離歩く方、長時間立ち仕事をされている方には、この程度の差でも違和感や痛みを覚える方もいますので、ご自身の脚長差を把握したうえで、5mm程度の調整であれば試してみるのも良いかもしれません。
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