気になる足のむくみに。リンパマッサージの正しい知識と方法
この記事の監修者
株式会社AKAISHI 代表取締役 赤石恒一 / 保健学博士
靴医学の権威、新潟医療福祉大学大学院の阿部薫教授に師事。専門分野は保健学で、足の悩みの改善や、靴の機能向上のための研究をしている。
【所属学会】日本整形靴技術協会(副会長)、日本靴医学会
今回のテーマは、マッサージです。
スポーツマッサージ、筋膜マッサージ、リンパマッサージ、ツボ押しなど一、マッサージには多くの種類があり、いろいろな考え方やメソッドがあります。
今回は下肢を中心としたむくみの軽減を目的としたマッサージについて、
基本的な考え方をご紹介しながら、誤解されがちな内容を解説していきます。
※まず大前提して押さえておきたいことですが、商用的にマッサージという言葉を使えるのは国家資格を持つ人間のみに限られています。こういった考え方があるという知見をご紹介しますが、ご自身で試されるにとどめ、他の方に施されるなどの行為はお控えください。
むくみの改善とリンパマッサージ
むくみの改善にはリンパマッサージがいいと言われます。それはなぜか。リンパってなにか、具体的に解説していきましょう。
そもそもリンパってどんなものでしょう?
簡単に言うと、リンパ液とは毛細血管から染み出てきた組織液のことです。この液がリンパ節を通り最後には静脈に流れ込む一方通行の経路のことをリンパ系といいます。下の図を見て頂くとわかると思いますが、リンパ系は静脈系に沿うように分布しています。
リンパ球の働き
リンパ液には、白血球の一種であるリンパ球(T細胞・B細胞・NK細胞)があり、
・体外からの異物を攻撃する免疫機能と
・脂肪酸と脂質を循環系まで運ぶ働きがあります。
また、途中にあるリンパ節はリンパ球の基地みたいなもので、ここでリンパ球を増やし、また異物をろ過しています。異物であるがん細胞などもここで捕らえられリンパ球に食べられてしまうのです。
がんが治るという誤解
ここで注意したいのは、「リンパマッサージすると癌が治る」という話題。
1日に5000個もできている癌細胞が、大きくなる前にリンパ球に捕らえられ食べられているかもしれません。といってもこれは顕微鏡単位でみた場合の現象に過ぎず、発覚するほどの大きさのがんにどこまでリンパ球が作用しきれているかは、疑問を持たざるをえません。いずれにしても、エビデンス(医学的な根拠)はありません。
おそらく、がん手術の過程でリンパ節切除をしてしまう場合や、放射線治療によりリンパの流れが停滞した時に行う用手的ドレナージ(マッサージ療法の一種)が、こういう誤解を生んでいるのではないでしょうか。※ちなみに、用手的ドレナージは症状や注意事項に個人差もありますので、医師に相談を。
むくみのメカニズム
なぜむくむのでしょうか?
大きく分けると2つの原因があります。
①毛細血管から染み出る組織液の量が多い ⇒組織内に水がいっぱい
・腎機能、肝機能の低下
・高血圧、血管透過性上昇
②排出される組織液の量が少ない ⇒ポンプで水を吸い上げてくれない
・心疾患
・リンパ液や静脈の流れの停滞
さらに、ポンプの構造の問題。
構造的にも要因があります。血管は柔らかいゴムチューブのようなものなので、心臓から送り出すときは勢いよく吐き出され、その流れも速いのですが、静脈やリンパ系のように戻るときはなかなか吸い上げられません。そのため、流れが逆流しないように逆止弁のようなものがついていて、血管を圧縮することで吸い上げていく構造になっているほど。もともと、停滞しやすいものだと考えておきましょう。
ここまでのメカニズムをみてみると、リンパ液や静脈の流れはマッサージで改善できそうです。
さあ、いよいよマッサージについてお話ししましょう。
下半身のリンパマッサージ
【マッサージの方向】
★リンパ液の流れに沿って足の先から上方向へマッサージしていきます。
①マッサージの前にぬるめのお湯に入浴 / ※熱いお湯だと血圧が上昇で逆効果。
②各指10回ずつくらい足指を擦るように指間マッサージをします。
③指をそるように足指の関節をストレッチ。
④手の親指で押すように足の裏全体をまんべんなく揉んでいきます。
⑤足の甲を骨に沿って、軽くこするようにマッサージします。
⑥足首はぐるぐるとゆっくり20回ずつくらい回します。
⑦ふくらはぎは下から、上に軽くさするようにマッサージします。
※筋肉のマッサージではないので、皮膚表面をなでるように。
⑧足首からふくらはぎにかけて、絞り上げるようにマッサージ。(今度は強め)
⑨膝裏を3本指で下から上へ少し強めに擦ります。
⑩太ももは表も裏も鼠径部に向けてはじめは軽く、最後は強めに擦るように。
ここまで、細かく行わなくても、下から鼠径部へ向かって軽く絞り上げるイメージで。
むくみの気になる人は参考にしてください。
効果は長くは続かない
マッサージの効果はいつまで続くのか。
実は、しばらくするとまた元に戻ってしまいます。但し、マッサージを習慣づけることで、流れがよくなり、むくみにくく疲れにくい脚になるのは確かです。続ける意義はあります。是非!!
ダイエット効果を期待するな
マッサージによって代謝は良くなるかもしれませんが、痩身効果には疑問が残ります。
TVやインターネットで見るような劇的な効果はある種のギミック(からくり)だと思います。むくみの正体は水分ですから、マッサージをした瞬間は上に持ち上がりますが、時間とともに元に戻ります。TVでの比較は、施術前と施術直後ですよね。「一時間後を見てみたい」といつも思っています。
むくみ対策:マッサージ以外の方法
もっと効果的なものはないの?
即効性を求めるなら、仰向けに寝てちょっと足を上げる。もしくは、階段の上り下りを行う。
横になって足を上げるとむくみが改善するのはイメージしやすいと思いますが、階段を上るとなぜむくみが解消すのか?
それは、ふくらはぎの筋肉が収縮することで静脈やリンパ管を圧迫し、リンパ液を上方向に流れさせているからです。特に階段の上り下りではこの筋肉がよくつかわれるので非常に効果的です。ミルキングアクションとか筋ポンプ運動ともいいます。階段を歩かなくても、足首を曲げ伸ばしするだけでもある程度の効果が期待できます。
逆に言えば、ブーツなど足関節が固定されて動きにくい靴では、よりむくみやすいことも覚えておいてください。
ツボ押しや経絡マッサージは有効か?
正直言いますと、以前は、この手の効果については否定的でした。しかし、最近の研究ではツボや経絡とリンパ系の関連性がエビデンスレベルで(明確な確証を持って)研究されつつあります。おそらく今後は、生理学的観点から説明できるものと、迷信にすぎないものとが、明確に分類されていくと思います。
とはいえ、リンパマッサージと経絡を結び付けて体質改善を謳っているものの中には、論理が飛躍しすぎているものも見受けられます。現時点では否定はしませんが、肯定もできません。
リンパや免疫についてもすべてが解明されているわけではないため、今後の医学の進歩に期待したいと思います。
気持ちいい」と「治る」は違う。
冒頭でもご紹介しましたが、「マッサージ」というのは、あん摩マッサージ指圧師の国家試験に合格した人のみが、生業として使える言葉です。健康器具でも、「マッサージ」と名の付くものは全て医療器具・医療機器の認証をとらなければいけません。
対して、カイロプラクティックやリフレクソロジー、アロマテラピーなども決していい加減なものではありませんが、これらは民間資格になりますので多種多様な考え方が乱立しているとご理解ください。
一つ覚えておいて頂きたいのは、あなた自身が施術されたときに「気持ち良かった」「なんだか、体が軽くなった」というのも事実。しかし、これにより腰痛や膝痛が治るということはありません。(厳密にいうと法律上あってはならない。)
病気を治せるのは、医師と専門資格を有するスタッフのみですので、下肢静脈瘤、リンパ浮腫、腰痛、膝痛などの症状は、必ず病院で診てもらってください。
これ以外の筋肉をほぐすマッサージなどについては、またの機会にご紹介します。
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