浮き指かも… と思ったら。その正しい理解と対策
この記事の監修者
株式会社AKAISHI 代表取締役 赤石恒一 / 保健学博士
靴医学の権威、新潟医療福祉大学大学院の阿部薫教授に師事。専門分野は保健学で、足の悩みの改善や、靴の機能向上のための研究をしている。
【所属学会】日本整形靴技術協会(副会長)、日本靴医学会
浮き指 基本編
浮き指ってよくないの?
今回のテーマは浮き指。
読んで字のごとく、直立した時に地面と足指の間に空間がある、<指が浮いた状態>のことを言います。様々な知見、考え方がありますが、浮き指は良くないことなのでしょうか?
そもそも「浮き指」とは、病名ではなく足の状態を示す言葉です。
個人的な見解ですが、浮き指自体がとても悪いものだとは考えていません。
浮き指になるような姿勢や靴の履き方、歩き方。これらが問題だと個人的には捉えています。
浮き指に問題があるように言う今の風潮は、少し不安を煽りすぎではないでしょうか。
浮き指は個性のひとつ?
確かに歩行時の推進力が少し弱く、片足立ち時の安定性が若干劣る気がしますが、あくまでも個性のうちではないでしょうか。
また、成長期の浮き指と足部アーチの形成不全の関連性は気になりますが、これも浮き指が原因というよりは、他の原因があって浮き指がサインとして表れているという解釈が正しいと思います。
中高年以降では足趾の病的変形が浮き指を招いてしまうこともありますので、正しい理解と判別が必要になります。
さらに、外反母趾も含めて浮き指の状態は巻き爪の原因になりますので、注意が必要です。
浮き指 検証&改善のための靴選び編
浮き指の判別方法
浮き指の判定には、ピドスコープと呼ばれる透明なアクリル板の上に立ち、浮いている指の数をカウントする方法があります。これを浮き指スコアといいます。
浮き指と判定されるのは10点以下の状態ですので、厳密に言えば、浮き指に該当する方は少ないと思います。
ピドスコープによる浮き指スコア計測について
足の裏の接地面を撮影し、足趾が接地しているのが鮮明に判るものを2点、不明瞭なものを1点、接地していないものを0点として、左右10本の足趾の合計点を評価する方法。
ご自宅で気軽に確認したい場合は、ダンボールや厚紙などを用意して、静止立位の状態で指の下に差し込み、入るかどうか確認してみてください。スッと指の付け根まで入り込んだ方は注意が必要です。自分で入れようとすると姿勢が変わってしまいますので、どなたかにお願いして確認してもらうことをおすすめします。
なぜ、浮き指が問題視されるの?
冒頭で、浮き指自体はそれほど問題ではないといいましたが、では何が問題なのでしょうか。
浮き指だと足指を上手く使えていないので、それを補うために下肢の別の部分にひずみが現れ、歩行や姿勢に影響を与えてしまいます。ここが問題なのです。
ちょっと、簡単に試してみましょう。
<片足立ちテスト>
まずは、普通に片足で30秒ほど立ってみてください。次に、わざと指を浮かせて同じ動作をしてみてください。明らかに、安定感が違うと思います。
もう一つ<しゃがみ込みテスト>
肩幅くらいまで足を広げて、踵を地面につけた状態で深くしゃがんでください。さらに、同じ動作を浮き指の状態で行ってみてください。明らかに、重心の位置が後ろにあるのがわかるはずです。続けて、しゃがんだ状態からジャンプをしてみてください。高く飛べないと思います。
どちらも、指を浮かせることによって足関節、それと連動する膝関節・股関節の柔軟性(スポーツでいうところのタメです)が失われて、姿勢や動きに影響を与えてしまいます。
静止立位時の踵重心はそれほど気にしなくてもいいと思いますが、動作(ダイナミクス)における踵重心は致命的です。スポーツをされている方は、どんな競技でも「後傾姿勢は良くない」と言われたことがあると思いますが、転倒や踏ん張りが効かずに瞬発力を発揮できないのはこういった影響があるからです。
なぜ浮き指になるの?年代別に検証、靴選びのアドバイスも!
幼少期から成長期にかけては、生活様式の変化や靴などが浮き指などの負のスパイラルを引き起こすと言われています。成人から高齢期にかけては、体型の変化や、筋力の低下、関節可動域の減少、足部骨格の変形が浮き指を引き起こす要因になっています。
とくに、幼少期から成長期にかけてはこの影響は無視できません。
児童(幼少期~成長期)
浮き指を取り巻く負のスパイラル
よく浮き指がすべての根源、浮き指を治すとすべてが解決するかのように書かれている論文などもありますが、それには違和感を覚えます。先程のしゃがみ込みテストでも、一見そのような捉え方をしがちではありますが。
ためしに今度は、ベタ足でしゃがみ込んでつま先を挙げてみてください。実は、重心はそのままのはずです。
なぜならば、姿勢や動作を制御するのは指先だけではないからです。
筋肉のバランスや関節可動域が浮き指などの姿勢に影響することもあれば、その逆もあります。これらは密接にかかわりあって、幼少期から成長期の発達に影響を与えています。発達がうまくいかなければ運動機能にも影響を与え、のちにスポーツ障害を引き起こしたり、プロのスポーツ選手になれる可能性がほんの少しだけ減ったり。(笑) もし、子どもたちが浮き指だった場合は、浮き指だけを見るのではなく、身体、姿勢などトータルで考えていく必要があると思います。
さらに、もう一つ考えなければいけないのは、外的要因である生活様式の変化と靴です。これは、保護者の方のサポートで比較的簡単に解決できるはずです。
世の中便利になりすぎて、ベッドにソファー、食事はテーブルにちょうどいい高さの椅子。習い事は車で送迎。さすがにトイレを和式に替えろと極端なことは言いませんが、こういった生活習慣が子どもたちの成長の機会を奪っているのかもしれません。適度に身体を動かす機会を設けてください。
子どもたちの体力・運動能力の低下が謳われる一方で、以前に比べ、日本のトップスリートが世界で活躍するシーンが増えました。この格差の秘密は、日頃からの意識の違いもあるのではないでしょうか。ちょっと脱線しましたね。
子どもたちの靴選びは、「運動を妨げない」「自由に駆け回れるもの」が基本です。
① 大きすぎない
→捨て寸(つま先と靴の間の空間)が多すぎないこと。ブカブカだと、持ち上げ歩きや、足を前に振り出して歩く癖がつきます。
② 重すぎない
→小股で歩いたり、足を前に振り出して歩く癖がつきます。また場合によっては、重さを足関節の過度の背屈でカバーしようとするために、足指も背屈させる動きがみられます。
③ 甲の部分でしっかりとホールドできるもの
→①と同様の理由です。
④ 靴底が厚すぎない(MP部で屈曲するもの)
⑤ 足関節が自由に動くようなもの(特別なスポーツをする場合を除く)
→④と⑤はスキーブーツで歩くことを想像してみてください。足指も使えないし、足首も自由にならないので、正しい歩行ができず、下腿三頭筋や足のアーチ形成にもあまりいいとは言えません。特に厚底の靴は普段履きでは使用させない方がいいです。
⑥ アーチのサポートは特に障害がない場合は必要ありません。
足の骨格形成は、男子で14~15歳、女子では12~13歳で著しく成長し18歳頃まで続きます。この頃の靴選びや運動習慣に少し気を付けてあげてください。
逆に、6歳以下では足の骨自体がすべて揃っているわけではないので、あまり神経質にならなくてもよいでしょう。
靴・インソールのおすすめ
弊社製品で児童向けに対応している靴、インソールは残念ながらありません。
どうしても浮き指が気になる場合は 「開張足パッド」をお試しください。
成人
20歳以上の成人の方は、それ以前に形成された骨格形状、足のアーチをいかに長く維持できるかが、浮き指を考えるテーマになります。残念ながら骨格形成はすでに終わっていますので、足や姿勢に良くないものを排除していくことで問題を改善していきましょう。
成人で浮き指が問題になるケースとして
足の横アーチの崩れ
ヒールの高い靴を好む方やランニング愛好家の方に見られるのが、開張足が原因で浮き指となるケースです。これは、前足部への過度な荷重が原因で起こります。
「踵重心で浮き指になる」という通説とは逆のメカニズムです。
この場合の問題の本質は中足骨骨頭痛や外反母趾などにあるので、見過ごされがちですがよく見ると浮き指になっていることがあります。
この場合は、浮き指の改善を目指すのではなく、それぞれの足部変形・疾患に合わせたインソールを使用することで改善が期待できます。
それぞれ、
O脚
開張足 / 偏平足
外反母趾
を参考にしてください。
成人のケースは、ほとんどがこれに該当します。
- レアなケースとしてはハンマートウやクロウトウ、リウマチ変形等がありますが、これも浮き指が問題というよりは、症状として浮き指がみられるということになります。
- また、長期間ヒールを愛用している方は、常に足関節が底屈位で歩いているので、腓腹筋の短縮や張力の変化とそれに伴う足趾の底屈筋の張力のバランスが崩れており、把持力が全般的に低下しています。
靴・インソールのおすすめ
インソール
スニーカーには「長距離ウォーク」がおすすめです。
また、浮き指以外の症状に合わせて、「お悩み膝用」「お悩み母趾用」もおすすめします。
靴
弊社製品ならどれも全般的に効果が期待できますが、あえて歩行サポート機能が控え目で、自分でしっかり歩くタイプの「AF132」「AF143」が、特におすすめです。
高齢者
高齢者の場合は、筋力低下・関節可動域の低下・姿勢や体形の変化に伴うものが多いようです。
いわゆる、踵重心、後傾姿勢だから浮き指になるという説明が当てはまるケースです。
歩行時においても、猫背、股関節の屈曲・がに股、膝関節の過屈曲がみられます。このような場合、小股で歩くことが常態化しているため、歩行時の推進力の低下を歩数で稼ごうとします。当然、足指を使わずに歩くことになります。
関節可動域の低下は仕方ないとしても、筋力をなるべく維持することが大切になってきます。
理想は、膝がまっすぐ伸びるような歩き方。変形性膝関節症の予防にもなります。
また、靴は平らなものよりも2,3cm位ヒールの高さのものを履いた方が、歩行のサポートと後傾姿勢の改善につながります。
靴・インソールのおすすめ
歩行サポートがしっかりしている、「AF151」「AF126」「AF472」「AF108」をおすすめします。
膝が気になる方には、「AF402」「AF406」をおすすめします。
浮き指改善 実践編
浮き指にならないために。日常生活で注意すること
全年齢で言えることですが、まずは、指をよく使うこと。そして、下肢(特に大腿部)の筋力を適度に鍛えましょう。
歩行時はトリプルエクステンションを意識するといいでしょう。
※トリプルエクステンションとは、3つの関節「股関節、膝関節、足関節(足首)」が同時に伸展(エクステンション)することを言います。(下の図の膝がまっすぐになる歩き方がそれにあたります。)
こんな靴は避けましょう。
- ① ヒールの高すぎるもの。(4cm以上)
- ② サイズの大きすぎるもの、小さすぎるもの。
- ③ 捨て寸の多すぎるもの。
- ④ 調整の効かないもの。
40代以降の方には、ある程度靴底が厚くても、ロッカーソールなどの歩行サポート機能がついている靴をおすすめします。
○浮き指改善 エクササイズ!
ここでは、足趾を鍛えるためのグッズを使ったエクササイズをご紹介します。
ぜひ試してみてください!!
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