足のお悩み百科

「足首が痛い!」 『原因』と『場所』から分類・解説・対処法

この記事の監修者

株式会社AKAISHI 代表取締役 赤石恒一 / 保健学博士

靴医学の権威、新潟医療福祉大学大学院の阿部薫教授に師事。専門分野は保健学で、足の悩みの改善や、靴の機能向上のための研究をしている。
【所属学会】日本整形靴技術協会(副会長)、日本靴医学会

今回のテーマは『足首』。
足首周りからアキレス腱の痛みについて説明します。

足関節捻挫 足首をグキっとしちゃったら……

足関節の悩みの中でも、圧倒的に多いのが捻挫ですが、これは慢性的な足部形態の変化というよりは、スポーツや日常動作からくる怪我という側面が強く、激痛を伴うことが多い為、「あっ、やってしまった。」という自覚も比較的強いと思います。10~35歳に非常に多いのもスポーツの影響だと思います。

そもそも、捻挫とは?

ちょっと定義がまわりくどいですが、関節に力が加わって起こるケガのうち、骨折と脱臼を除いたものを捻挫といいます。簡単に言うと靭帯や腱、軟骨のケガをいいます。
足関節の場合は、過度の内反・外反による靭帯の損傷や断裂が非常に多く発生しています。

足首の捻挫には、<内反捻挫><外反捻挫>があります。個々に説明していきましょう。

<内反捻挫> 足が内側にグキッ

主な原因

内反捻挫は、日常生活でもよく起こりやすく、足関節の捻挫の85%が内反捻挫というデータもあります。
下の図のような経験はありませんか?ヒールで踏み外した時に起きる「グキッ」となるアレです。
「ヒール履いて捻挫した」ならば、内反捻挫だなと想像できます。

内反捻挫の損傷部位:この場合の損傷部位は外くるぶし付近の3つの靭帯が疑われます。

  • 外くるぶしの前……前距腓靭帯 <下図の①>
  • 外くるぶしの後……後距腓靭帯 <下図の②>
  • 外くるぶしの下……踵腓靭帯 <下図の③>

※損傷部位は、くるぶしの前・後ろ・下で判断できると思います。前距腓靭帯か前距腓靭帯+踵腓靭帯が発生率としては多いようです。
また、内反捻挫は癖になりやすいのでご注意ください。

1.前距腓靭帯 2.後距腓靭帯 3.踵腓靭帯

<外反捻挫> 足が外側にグキッ

主な原因

これはなかなか日常生活ではおこりにくいですが、サッカーなどのスポーツで多くみられます。
インサイドキックやキック時の軸足に対するスライディングなど、競技の特性によるもので、ラグビー、野球、テニス等でも発生しやすく、スポーツ障害として認知されることの方が多いようです。

1.内くるぶし、三角靭帯 2.外くるぶし、脛腓靭帯結合

外反捻挫の損傷部位

  • 内くるぶしの下方……三角靭帯<上図の①>
  • 外くるぶしの上方……脛腓靭帯結合<上図の②>

本当に捻挫?骨折かも?

三角靭帯は非常に大きく強靭な靭帯ですから断裂することは稀ですが、下図の通り、内くるぶしの剥離骨折や腓骨骨折を伴った重症化することがありますので、自分で判断せず医者へ行くことをおすすめします。

内くるぶしの骨折と腓骨骨折

捻挫の対処法

捻挫ぐらいと侮らないで!すぐに『RICE処置』

Rest(安静) Ice(アイシング) Compression(圧迫・固定) Elevation(高くする)

ケガの急性期は患部の血流を抑え、炎症を一刻も早く食い止めることがその後の回復や後遺症の有無に直結します。
ではなぜ血流を抑えるのがいいのでしょうか?
それは、ケガをすると患部の免疫機能を活性化させるために血液が患部に集まるのですが、その影響で患部周辺や患部より末梢の血流が少なくなってしまい、周辺の細胞が酸欠、壊死を起こしてしまうからです。
つまり、患部を治そうとした免疫反応によって、周りの細胞が犠牲になってしまうということ。そうならない為には、

  1. 安静にして血流量を増やさない。(Rest) (Compression)(Elevation)
  2. 免疫機能を活性化させない。(Ice)

これを手技として行っているのがRICEです。ちなみに、捻挫は血がでませんが、体の中で内出血しています。

扁平足の方、O脚の方は要注意?

海外の論文ですが、偏平足やO脚の方は、そうでない方にくらべて捻挫しやすいというデータがありますので、該当する方は、お気を付けください。

変形性足関節症…足首周りの関節がすり減ることで起こる症状

症状

足関節の軟骨がすり減ることにより、柔軟性が制限され最終的には痛みが生じます。
変形性膝関節症と現象は似ています。
痛みが生じる部位は、距腿関節の内踝面(内くるぶしの奥)が主となります。

原因

先天性内反尖足や先天性偏平足などのアライメント不良(骨格や骨の並びのバランスが崩れた状態)や関節リウマチ・距骨滑車の剥離性軟骨症、血友病等による軟骨の破壊が要因となります。

疼痛部位→段々軟骨がすり減り→軟骨消失、部位に疼痛

進行初期では、変形性膝関節症と同じようにラテラルパッドで保存的治療が可能です。

また、足関節に背屈制限(関節が動きにくい・動かすと痛い)があり、蹴り出し動作ができにくいので、靴はフォアフットロッカーがついているものをお勧めします。
また個人的には、足関節が固定されるようなチャッカー丈のブーツなら尚更いいのではないかと思います。

フォアフットロッカー…靴のつま先が、反りあがっていることで、足指を大きく曲げなくても蹴り出しがしやすい靴底形状。

つま先がコロンとしていて、蹴り出しやすい。

アキレス腱周囲炎…アキレス腱まわりの痛みについて

アキレス腱とは

アキレス腱の図

アキレス腱は、人の体の中で最も大きく強靭な腱で、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)と踵の骨(踵骨)をつなぐワイヤーのような役割をしています。主に、歩行や走行、跳躍の際にふくらはぎの筋肉を収縮させることで踵の骨を引張り、推進力を足裏へ伝達する、非常に重要な靭帯です。これほど重要な靭帯にも関わらず、腱の付着部より約2~6cmの間で毛細血管がまばらなところがあり、一度、痛めてしまうとなかなか治りにくい部位でもあります。

毛細血管の分布図

ギリシャ神話:アキレスの急所

ご存知かと思いますが、アキレス腱の名前の由来は、ギリシャ神話に登場する無双の戦士「駿足のアキレウス」から。アキレウスが生まれたときに母親は、彼を不死の体にするために冥府を流れる川に全身を浸します。ところが、母親の手がつかんでいたので足首だけが不死とならず、のちに戦場でそこを矢で射られて死に至るという神話によるもの。今では致命的な急所という意味で使われます。

アキレス腱の痛みには、<アキレス腱(周囲)炎>、<アキレス腱滑液包炎(ハグルンド病)>などがあります。これらについて説明していきます。

<アキレス腱(周囲)炎>……アキレス腱そのものの痛み

アキレス腱自体の炎症をアキレス腱炎と呼び、アキレス腱を覆っているパラテノンと呼ばれている薄い膜が炎症を起こしていることをアキレス腱周囲炎といいますが、どちらの損傷か明確に区別できず、かつ、治療法・原因に差異がないため同じ扱いで述べられることが多いのですが、どうしても、見分けたい方は、Arc sign TESTをやってみてください。

Arc sign TEST

足の角度を変えて、痛みの部位の変化を観察してみてください。

アキレス腱周囲炎のA図とB図

A:アキレス腱周囲炎では、足関節の角度が変わっても圧痛部位は変わりません。

B:足関節の角度変化に伴う圧痛部位変化は、アキレス腱自体の痛みを示しているのでアキレス腱炎といえます。

(※下肢のスポーツ疾患治療の科学的基礎:筋・腱・骨・骨膜 P43より)

原因

主にスポーツが原因 / ランニング・バスケットボール・サッカー・バレーボール

【なりやすい方 / 状況】

  1. 男性ランナーに多く発症し、寒冷環境における発生率が高い
  2. 加齢 / 急激な体重の増加/オーバーユース
  3. ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)の柔軟性低下
  4. 踵骨の 内反位・外反位 / 距骨の過回内
  5. 間違ったランニングフォーム

1、2、3については、なんとなくイメージできると思いますので、4、5について、解説します。

踵骨の内反位・外反位って?

内側に傾斜(内反位サビネーション) 正常(ニュートラル) 外側に傾斜(外反位プロネーション)

ランニングシューズで、オーバープロネーション用という表記がありますが、オーバープロネーションは、走行中、踵接地後~蹴り出すまでの間に、踵の骨が外側に過剰に傾く状態をいいます。図で赤く示したアキレス腱が外側に折れ曲がり、この折れ曲がっている部分に負荷がかかってしまいます。
ちなみにこのかたち、何かに似ていませんか? そう、外反偏平足です。非荷重時にはニュートラルなのに、まっすぐ立った時に外反偏平足になるという方は注意が必要です。
同様に、内反位の方も注意が必要になります。

アキレス腱炎の方にみられる走りの特徴
  • 全般:骨盤の過度な前後傾/胸椎後弯 (猫背)
  • 踵接地:膝過屈曲 / 足部過回内(オーバープロネーション)
  • 立脚中期:膝の内外反
  • 蹴り出し時:骨盤後傾 過度の足関節底屈

ちょっと難しく言いましたが、簡単に言うと、こういうことになります。
※「ランニングはしない。」という方も普段の歩き方の参考になりますので、確認してみてください。

まず、骨盤を前傾しすぎるとお尻が突き出たような姿勢になり腰に負担がかかります。
それにより足が地面から受ける衝撃が通常よりも強くなり、オーバープロネーションの原因になってしまいます。

また、疲れてくるとこういう姿勢になりがちですが、逆に骨盤が後傾になると、猫背になり膝も伸びず踵の接地後に必要以上にブレーキがかかってしまいます。
その分、足先(足関節)で蹴り出そうとするのですが、これがアキレス腱に負担がかかってしまう要因の一つ。

正しい姿勢での走り方の図

正しい姿勢で走ろう!歩こう!

猫背にならず、膝をしっかり伸ばし、重心を高く、足先だけでなく脚全体で歩くよう心掛けてください。
ランニングに限らず日常の歩行でも同じです。
ちなみに、アキレス腱が痛くてどうしようもないときは、足先を使わず、股関節や骨盤を大きく動かすことで膝を前に運び歩いていませんか?
痛いときに行っている動作は、裏を返すと痛くならないようにするための動作でもあるので、再発を防ぐために参考にしてみてください。

<アキレス腱滑液包炎(ハルグンド病) >…アキレス腱まわりの炎症

滑液包の図

アキレス腱滑液包炎は、アキレス腱周囲炎と部位が少し違います。
アキレス腱と踵骨の緩衝材として滑液包というものが機能しているのですが、靴との圧迫や摩擦で炎症を引き起こすことがあります。アキレス腱周囲炎と同様にスポーツ障害として発症することもあるのですが、ヒールを履く女性で、土踏まずが高い方、踵骨が大きい方が発症しやすい傾向にあります。

場合によっては、この圧迫により踵の骨そのものが隆起し、滑液包とともに炎症が起きることがあります。これはハルグンド病(変形)と呼ばれるもので、慢性的な炎症をもたらす場合があります。たまに、
女性の方で、踵の突起部に靴ズレや炎症を起こしている方を見かけるのですが、慢性的に起きるようであれば、踵(カウンター)の硬い靴を履かないなどの工夫が必要になります。ハルグンド病はpumb-bump(パンプス腫)と呼ばれることもあるようです。

アキレス腱炎の痛みへの対処法

1.患部の炎症・痛みを取り除きましょう

安静に、アイシングや消炎剤で痛みを除去

2.痛みの原因を特定します

動作、姿勢、筋機能、可動域、柔軟性等から原因を探ります。

3.痛みが取れたら患部の柔軟性を回復

マッサージやストレッチをしていきます。

4.ヒールレイズ運動で改善

荷重エクササイズを開始して徐々に負荷を上げていきましょう。

1.まず、大原則なのは痛みが発生した場合は、患部の消炎・鎮痛に努めること。
この時に無理に運動をすると慢性化する恐れがあります。時々、痛くなるとストレッチをするという方がいますが、痛いときにストレッチをしても悪化するだけです。まずは、安静にしてアイシングや消炎薬で痛みの除去に努めてください。

【痛くてもどうしても歩かないといけない場合】

ヒールが低く平らなものより、2~3cm位ヒールのほうが高い靴を履くと痛みが抑えられるようです。
ただし、3cm以上のヒールでは逆効果になることがあるのでご注意を。
大きすぎるもの、サイズの合わないものは厳禁です。

2.炎症が改善したら、痛みの原因を特定してください。

プロネーションが原因であれば、プロネーション対策用の靴や偏平足用のインソールを使用することで、再発を防ぐことができます。
姿勢やフォームが問題であれば、これを機に見直してみるといいかもしれません。

3.歩行時の痛みが完全に治ったら、患部の柔軟性を回復させるために、ふくらはぎのマッサージやストレッチを行います。
注意したいのは、一気にたくさんやるよりも、徐々に時間や強度を増やしていくこと。あせりは禁物です。

4.柔軟性がある程度回復した後は、ヒールレイズ遠心性収縮運動を行うとより予後が良好になります。

ヒールレイズ(ふくらはぎのストレッチ運動)

背もたれのある椅子を用意します。

  • 足を少し開いて真っ直ぐ立ちます。
  • 椅子の背に軽く手を置き、つま先立ちをするように踵を上げたり、降ろしたりします。(10~20回程度)

ヒールレイズの図

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