足こそ要!エコノミークラス症候群
この記事の監修者
株式会社AKAISHI 代表取締役 赤石恒一 / 保健学博士
靴医学の権威、新潟医療福祉大学大学院の阿部薫教授に師事。専門分野は保健学で、足の悩みの改善や、靴の機能向上のための研究をしている。
【所属学会】日本整形靴技術協会(副会長)、日本靴医学会
ご存知ですか?「エコノミークラス症候群」
ここ数日冷え込みが強まり、早くも初冬の気候となってまいりました。紅葉が見ごろとなり、行楽に出かける方や、年末年始にかけて旅行の計画を立てていらっしゃる方も多いかと思います。
そこで、長距離移動にかかわるトラブルの中でも話題になることが多い「エコノミークラス症候群」について、その予防法をご紹介したいと思います。
ファーストクラスでもおこる!エコノミークラス症候群って?
まずは、エコノミークラス症候群の発症する仕組みをみてみましょう。
旅客機による大陸間の長距離移動が本格化する1980年頃から認知されはじめ、エコノミークラスの乗客が発症することからこのような名前がつけられました。当時は原因が不明で「~症」ではなく、「症候群」という一連の身体症状を指していました。
現在では、静脈の鬱滞(うったい)や血液凝固の亢進からくる血栓が原因の静脈血栓塞栓症(急性肺血栓塞栓症)とメカニズムが特定されています。
また、発症するのはエコノミークラスの乗客に限ったことではなく、欧米では「旅行者血栓症」とも呼ばれています。2002年にサッカー元日本代表の高原直泰選手も、ビジネスクラスを利用していたのに発症しました。日本では年間約4000例の症例が報告されており、地震等の災害の際に、自動車の中で避難生活を送る方々の中にも発症が確認されています。
発症のメカニズムは下記の通りです。
- 血液中の粘度が上がる
- 血管内に血栓ができる
- その血栓が血液中を流れ肺動脈につまり、失神・ショックが起きる。(最悪の場合には死亡に至る)
エコノミークラス症候群の場合、下肢で小さな血栓ができます。その血栓が足の下大静脈から心臓へと流れていき、最後に肺動脈(もしくは肺の小さな血管)でつまる経路のため、肺で発症します。
飛行機内で、エコノミークラス症候群の危険が高まる理由。
エコノミークラス症候群は、飛行機の中で起きやすい傾向があります。それはなぜでしょうか?
飛行機内の環境の特徴は……
- 乾燥した空気
- コーヒーやお茶・アルコールの摂取
- 低い気圧
- 長時間の座位(窮屈な姿勢)
1、2によって水分摂取が不足し、3、4によってうっ血を起こし、血栓ができやすくなります。
※あまり知られていませんが、コーヒーやお茶は一時的な水分摂取にはなりますが、利尿作用<水分を尿として排出しやすくする作用>もあります。飲み過ぎは逆効果です。
上記の中でも、直接の原因は4の「長時間の座位姿勢」です。長時間座り続けることで、下半身特に下肢の血流循環が悪化し、血栓ができてしまいます。
エコノミークラス症候群、こんな人は特に注意!
エコノミークラス症候群の引き金は、血栓です。
血栓ができやすい人は注意が必要です。中性脂肪やコレステロール、糖分などが過剰に含まれている、いわゆる「ドロドロ」血液の方や血管に負担をかけている高血圧症も、血栓ができやすい大きな要因です。
健康な人でも、下の5つに該当する人はやはり注意が必要です。
- タバコを吸う人
- お酒を毎日飲む人
- 甘いものが大好きな人
- 食べ過ぎや運動不足の人
- ストレスを抱えている人
その他、糖尿病・高血圧症・下肢静脈瘤・カテーテル手術の術後間もない方はリスクが高いので、さらに注意が必要といえます。
機内でエコノミークラス症候群を防ぐ対策は?
予防することが最善の方法です。
では、どうすればエコノミークラス症候群を予防できるでしょうか?
ポイントは3つあります。
1:こまめな水分補給
乾燥した機内・車内では、体内の水分が普段以上に失われがちですので、こまめな水分補給を心がけましょう。なるべく、コーヒー・紅茶・アルコールなどは避け、水や清涼飲料水等を飲むようにしましょう。(但し、国際線の場合は、機内持ち込みの制限に注意。)
2:下肢・足部のマッサージやストレッチ
飛行機内では可能ならばスリッパにはきかえるなど、足先を締め付けない工夫を心がけてください。
特に睡眠中は要注意。靴を脱ぎ不要な紙などの上に足を置くようにするだけでも違います。
また、むくみや冷え性対策と同じですが、下肢の血液循環が悪くならないようにするには、ふくらはぎを使う運動が効果的です。足首を曲げたり、回したり、つま先をギュッと曲げたりするとふくらはぎの筋肉が収縮し、下肢静脈の血液がポンプ作用(筋ポンプ作用)によって循環されます。着圧ソックスを履くのも効果的です。
(筋ポンプ作用)
また一見、行儀は良くないのですが、実は貧乏揺すりも有効で、下肢の血行促進や股関節の軟骨再生、一般的な死亡リスクの減少など、様々な効果が報告されています。医療現場では、「ジグリング」というリハビリ療法として、貧乏ゆすりを推奨しているところまであります。立ち上がることもできないような場所では、こっそり「ジグリング」をしてみてはいかがでしょう。
3:通路側に座る
国立循環器研究センターもHP上でアナウンスされていますが、席から出にくく、トイレに立つのもおっくうになりやすい窓側よりも、すぐに立って歩ける通路側の席にするのも予防のひとつです。その方が、立ち上がったり姿勢を変えたりしやすいですね。
エコノミークラス症候群になりにくい靴選び。
ではエコノミークラス症候群にならないためには、どのような靴を履くのが理想でしょうか?
すぐに脱ぎ履きでき、スリッパに履き替えられるものも1つの選択肢かもしれませんが、新幹線ではそうもいきません。
そこで、靴選びの5つのポイントを押さえておきましょう。
- 足関節が固定されるようなブーツはNG
- きつめで調節ができないものはNG
- ファスナーや紐などで調整が容易にできるもの。
- 爪先を曲げ伸ばしできるような、屈曲性の良い靴。
- ストレッチ素材のもの。
下肢の血液循環を阻害しない、簡単なストレッチができるような屈曲性のあるファスナー付きの靴が基本的にはおすすめです。席に着いた際は、ファスナーを下しておくのもいいでしょう。
また、ブーツでもゆったり目のぺたんこブーツやストレッチ素材であれば問題ありませんが、編み上げのロングブーツなどは下肢の血流を阻害しますので長時間移動の際は控えた方がいいでしょう。
また、そういった意味でもファスナー付きの靴は締め付けから解放してくれるのでおすすめです。ちなみに、ストレッチができるという意味では、貧乏ゆすり(ジグリング)ができるような屈曲性の良い靴がお勧めです。座席でのジグリングは周りの方に迷惑がかからない程度で行いましょう。
弾性ストッキングもココに注意!
同じ締め付けでも、弾性ストッキングは適度にふくらはぎを締め付けることで、ポンプ作用(筋ポンプ作用)を促し、血液を循環させます。ですが、それ以上にブーツなどで締め付けてしまうと、逆に血流が阻害されてしまうので、注意が必要です。
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