足のお悩み百科

足底筋膜炎 予防とケア

この記事の監修者

株式会社AKAISHI 代表取締役 赤石恒一 / 保健学博士

靴医学の権威、新潟医療福祉大学大学院の阿部薫教授に師事。専門分野は保健学で、足の悩みの改善や、靴の機能向上のための研究をしている。
【所属学会】日本整形靴技術協会(副会長)、日本靴医学会

足底筋膜炎のメカニズム

疲労や過負荷など原因はいくつかありますが、足底筋膜炎の発生メカニズムは、縦アーチが崩れ足底腱膜が過剰に伸ばされたり、歩行のたびに伸び縮みさせられたことにより、靭帯に微細な断裂傷が付くことで炎症を引き起こします。酷使され切れかかった輪ゴムをイメージしてください。極まれに、高いところから飛び降りるなど直接的な衝撃を受けることでも足底腱膜を傷つけることもありますが、大半は縦アーチの低下により引き起こされているものでしょう。

また、運動学的な観点から見てみましょう。歩行時に荷重がかかるタイミングで、縦アーチは下がり足底腱膜が伸ばされますが、荷重がかからなくなると縦アーチが上がります。これを繰り返しながら、歩いているわけですが、繰り返す回数や伸びる量が多かったり、足底腱膜が伸びにくく切れやすい古くなったゴムのような状態になると、炎症や疼痛を引き起こします。これが足底筋膜炎です。

アーチ扁平化により伸ばされた状態 足底筋膜炎の好発部位

さらに、アーチの崩れによる負荷だけではなく、足の機能構造上の問題も足底筋膜炎を引き起こす要因となっているのです。

足の指を上げると、土踏まずのところにピーンと張った筋(これが足底腱膜)が現れると思います。なぜ指を上げると足底腱膜が張るのか? それは、足底腱膜が、踵と指の付け根のちょっと先の2箇所で付着している為、足の指を上げるとウインチのように巻き上げられ、足底腱膜にテンション(緊張)がかかってしまうのです(Windlass effect)。歩行時にも同様の瞬間があり、これが、蹴りだすときの推進力になるのですが、同時に足底腱膜に負担をかけてしまう瞬間でもあるのです。

ウインチの様に巻き上げられる 歩行時にも同様の瞬間がある

靴選びの勘違い

よく、正しい靴選びの項目として、指の付け根部分で良く曲がる靴が良い靴だと言いますが、足底筋膜炎を考慮するとあまり曲がり過ぎるのもどうなのかなという気がします。 特に、足底筋膜炎を発症してしまっている人は、つま先(トー・スプリング)が適度に上がっていて、指を曲げなくても踏み返しができるものがよいと思います。

足底筋膜炎 5つの予防策

まずは、アーチが落ちないようにすること。アーチの崩れを予防することが足底筋膜炎を予防することになりますので、まずは、偏平足/外反偏平足の予防を実践してください。また、万が一になってしまったとしても慢性化させないことが大切です。

おさらいですが、これが足のアーチの崩れを予防するポイント。

  • 適度な運動により、筋肉のボリュームを維持する…伸びる量を減らす
  • 過度な体重の増減(主に増加)に注意…伸びる量を減らす
  • 大きめのサイズや、ゆったりしすぎの靴を履かない…伸びる量を減らす
  • 靴の紐はしっかり締める…伸びる量を減らす
  • ストレッチで足底腱膜や腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)を柔軟に保つ…伸びても大丈夫な柔軟性)

さらに、靴選びのポイントは以下の通りです。

  • 内側縦アーチを支えるインソールを使用
  • 底の薄いものは避ける
  • 前よりも踵部が1cmから2.5cm位高くなっているもの
  • つま先(トー・スプリング)が適度に上がっていて、指を曲げなくても踏み返しができるもの

過度な運動は逆効果

「過度な運動」をなぜ太字にしたかといいますと、実はここ、ランニング愛好家の人にほとんど守られていません。ランナーの人に多いのはオーバーユースが原因です。それでも、どうしてもという方は走法を工夫・靴を初心者用に戻してみる等の工夫をしてみてください。

これまでの話をまとめると、一番やってはいけないのは、
「ここ数年、運動もしてないから体重が増えてきちゃった」
「明日から、ランニングを始めよう」

と言って、準備運動もせずに10kmも走ってしまうことです。本当に気を付けてください。
実は、私もこれで後悔したことがあります。

足底筋膜炎になってしまったら

まず、炎症を止めること。
安静にし、市販の薬(バンテリンやボルタリンなどの消炎剤)を塗る、または市販の湿布等を使って冷やすのが大切になります。

ただし、落とし穴があります

冷やして炎症を止めることは、最初(急性期)は有効ですが、それを繰り返すうちに慢性化し余計悪くなってしまう可能性もありますので注意してください。まずは、炎症を止めることに注力しながら、<足底筋膜炎5つの予防策>を実践してください。

慢性化した場合や、インソールの処方・ヒアルロン酸やステロイドの局所注射等の保存治療で良くならない場合、仰々しい名前ですが、体外衝撃波治療(ESWT)や自己多血小板血漿療法(PRP療法)という治療方法があります。どちらも慢性化した痛みを改善させるために、意図的に小さなケガを起こさせ、人間本来の治癒力のスイッチをもう一度押してやることで痛みを改善してあげるものです。
ただし、これらの治療で痛みは改善しますが、足底筋膜炎の原因を取り除く根本的な解決にはなっていませんので、さきほどの6つの予防策は、並行して実践する必要があります。

足底筋膜炎の痛みを軽減するには

足底筋膜炎の方はインソールだけでなく、場合によっては、アウトソールにも工夫が必要になります。
まず、インソールで土踏まずをサポートし、足底腱膜のテンション(緊張)を緩め、痛いところは接触しないようにくり抜いてあげます。こうすることにより、痛みを軽減しながら、腱膜を極力弛緩させてあげるようなつくりになっています。

足底筋膜炎用のインソールのしくみ

<足底筋膜炎のメカニズム>で述べましたが、縦アーチが崩れることで、足底腱膜が無理に延ばされる。→無理に伸ばされることで、炎症を起して痛くなるというのが足底筋膜炎の原因でした。
そこで、まずはトラブルの元となる縦アーチの崩れを支えることが重要となります。インソール選びに関しては以下のポイントを参考にして下さい。

  • 縦アーチがサポートされている
  • 土踏まずから踵までの部分は、プラスチック等で補強されていて簡単に曲がらない。
  • インソールの表面は柔らかい素材が使われている。

但しこのようなインソールは、使用できる靴が限られます(インソールが取り外しできるタイプ)。
パンプスのように、<厚みのある全敷きタイプのインソール>が使用できない場合は、薄型でも縦アーチがサポートされるインソールを使用してください。東急ハンズやロフトなどには、インソール専用売り場がありますので、適切なインソールを選んでください。

ちょっとした工夫で痛みを緩和できる方法もあります。
*インソールが取り外しできる靴のみ可能

外くるぶし
厚さ4mm位のフェルトを用意します。使用したい靴のインソールを外し、踵のインソールの底の形に合わせて、用意したフエルトをU字に切ります(図のオレンジ部分)。
この際、Uの両先端がおおよそ外くるぶしくらいに合わせ、10mm位の幅に切って、靴とインソールの間に入れてみてください。これで、少しは楽になるはずです。

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