ハイヒールの嘘・ホント

それってホント？よく見かけるハイヒールの情報

• ハイヒールで痩せる
• ハイヒールで美脚
• 走れるハイヒール
• 踊れるハイヒール
• 歩きやすいハイヒール

ファッション誌やインターネット上で、こんな記事をよく見かけます。
靴医学の立場からすると、ハイヒールは、様々なトラブルの原因となるお薦めしたくない履物の代表です。

しかし、その一方で、美しさを演出する履物として不動の人気があるのも事実。
そこで今回は、ハイヒールにまつわる情報について検証していきます。
 

検証1　「ハイヒールで痩せる」

【よくある記事の内容/痩せる理由】

ハイヒールを履いて歩くと、

• 普段使われない筋肉が使われる。
• インナーマッスルが鍛えられる。
• 筋肉がつくことで、基礎代謝が上がり、痩せやすい体質になる。

結果： ちょっと無理あり

基礎代謝の中で、筋肉が担当する割合は20％程度。ですから成人女性の場合、筋肉による一日の基礎代謝量は、1200kcal×20％で、おおむね240kcalということになります。
つまり、体重45kgの人が、がんばって1kg筋肉を増量しても、一日当たりの消費カロリーは5kcalアップする程度です。これで痩せるというには無理がありますね。

ちなみに、ボディビルの人でさえ、増やす筋肉は年に2～3kgほど。私たちが筋肉を1kg増やすためには、かなりの本格的トレーニングが必要になります。

検証2 「ハイヒールで脚が細くなる」

【よくある記事の内容/美脚になる理由】

ハイヒールを履くと、

• かかとの位置が上がり、つま先立ちのような状態になるので
  ふくらはぎの筋肉が鍛えられ引き締まる。
• 正しく歩けば、太ももが引き締まり、ヒップアップする。

結果： 嘘

筋肉が鍛えられると、筋肉が大きくなるわけですから、脚は細くならずに太くなります。ですから、筋肉を鍛えて脚を細くするというのは嘘ですね。
とはいうものの、適度に筋肉のついた脚は外見的にメリハリがあり、そのような脚を「美脚」とする意見は多いようです。
但し、前述のように、つま先立ち歩きをする程度の運動負荷では、筋肉が肥大することはありません。筋肉を鍛えたいのであれば、正しい方法で筋トレする方が良いでしょう。

検証3 「ハイヒールで走る・踊る」

【よくある記事の内容/ハイヒールで走れる・踊れる理由】

• クッション性に優れたソール
• 滑りにくい中敷
• ヒール位置のバランスが良い
• つま先が屈曲しやすい

結果： 足を痛める・転倒の可能性あり

まず、上記「ハイヒールで走れる・踊れる理由」にあげられているのは、パンプスを履いて普通に歩くために必要な基本的な性能であり、特別な性能ではありません。実際にハイヒールを履いて、走ったり、踊ったりする方がいるのであれば、嘘ではないのでしょうが、一般人がそのようなことをすれば、足を痛めたり、転倒したりする可能性が大いにあります。

例えば、下の図をご覧ください。
10cmのヒールの場合、足にかかる荷重の90％がつま先に集中します。

これは、立っている状態のものですが、走った場合には体重の２倍相当の荷重がかかりますので、つま先周辺にはとんでもない力がかかることになります。ハイヒールの薄い靴底のクッション性でどうこうできるものではありません。

また、ヒールの高さが8ｃｍを超えると、立位保持機能（ふらつかずにしっかり立っている機能）が、ローヒールと比べて４割も低下するという研究結果があります。

これに関しても、ヒール位置のバランスを変える程度では大きな改善になりません。

まとめ

以上、ハイヒールで痩せる、美脚になる、走れる・踊れるハイヒールという情報は、何ら科学的根拠が無いということになります。
しかしそれでも、女性の脚を美しく見せるという点に関しては、ハイヒールの存在価値が変わることはないと思います。

欧米では、ハイヒールはドレスアップが必要なシーンでのみ活用されているようです。
日本でもそのような習慣を取り入れていくと良いですね。